【舩津文渕】
【嘉永6年(1853年)】
日比谷家の屋敷で袋戸として使用されていた四面の小襖である。
嘉永6年に日比谷家から依頼を受けて制作されたものであり、作者は上沼田村(現足立区江北地域)の豪農で、谷文晁に師事して絵師としても活動した舩津文渕(ふなつぶんえん)である。
現存する文渕の日記『菜菴雑記』(さいあんざっき)には、「小右衛門新田新右衛門午之介同伴二て参(まいる)襖画頼ニ来ル」(三月九日条)と本作の依頼があってから、引き渡すまでの記録が残っている。(新右衛門は小右衛門新田の日比谷家を指す)
文渕は、千住近在の文人として鈴木其一ら江戸琳派の絵師とも交流が深く、相互に画風・画題の影響を与え合う環境にあった。
日比谷家はこうした背景を理解した上で依頼をしたのであろうか、本作も金箔地に四季の草花という江戸琳派風の図になっている。
日比谷家にはこのほかにも木製の襖に描かれた琳派を彷彿するような草花絵図あった。
やはり日記から文渕の作と推測されるがこれは昭和の頃に残念ながら失われてしまっている。
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